以前も、イラストをご注文いただいた内視鏡医の先生の依頼で、プレゼンテーションで使うスライドの、タイトルイラストを制作しました。
スライド用のイラストを納品をしたのだいぶ前のことで、昨年の秋頃『JDDW2019KOBE』という消化器関連学会で使っていただきました。(コロナの流行る前のことですので、あしからず)
前回ご注文いただいたイラストの記事はこちら↓
今回はイラストの著作権譲渡についても少し触れています。
「著作権って譲渡してもらった方がいいの?」と疑問に思っている方に読んでいただければ幸いです。
目次
1 |
プレゼンは眠たくなる… |
2 | イラストの制作過程 |
3 | イラストの著作権契約について |
4 | まとめ |
1. プレゼンは眠くなる…
みなさんプレゼンは好きですか?
私は正直、難しい話をされるとすぐ眠くなります。
たとえ興味のある分野の話でも、何人も何人もプレゼンを聞き続けているとついウトウトしてしまう…そんな経験はないでしょうか?
プレゼンのタイトルって綺麗に整ったデザインされていても、綺麗すぎてなんというか普通なんですよね。

しかし、タイトルがこれ↓だと間違いなく会場がざわつきます。
「そんな馬鹿な」「ふざけてる」と思われる方もいるかもしれませんがふざけてないです。
このパンチの効いたイラストには理由があります。
そして念のため申し上げますが、プレゼンの内容も至って真面目です。
プレゼンのコツは、
- 「わかりやすく、見やすく」⇒グラフ・写真・図・見出し・色の統一
- 「論旨を明確に」⇒結論から述べる 理由・裏付けを伝え、最後にもう一度結論
- 「感情を動かす」⇒共感を得たり、情熱を伝える
この3つがバランスよく組み込まれていれば、どんなスタイルでもよいプレゼンとなります。
中でもプレゼンを退屈させないためには、聞き手の「感情を動かす」ことが特に重要です。
このイラストの「感情を動かす」効果はズバリ「つかみ」です。
眠たくて椅子の背もたれにもたれかかっていたのが、このイラストが出ると、ちょっと前のめりになってしまいますよね(笑)
タイトルに持ってくることで、他のプレゼンとは違う期待感や、登壇者個人への興味を惹かせることができます。
流れを変えたり、人の注意を集めたり…そんなことも、1枚のイラストで可能なのです。
プレゼンに限らず、セミナーや動画でも「つかみの絵」というものは、他との差別化や目を引き付ける効果があります。
2. イラストの制作過程
ヒアリング、見積り、打ち合わせ
今回のイラストの依頼内容は
「世紀末風みたいな、パンチの効いたもので」という注文でした。
さらに、クライアント様の「OLYMPUS社の内視鏡の解説」というプレゼンテーマにあったイラスト、という条件もありました。
そこでヒアリングから、内視鏡2本をナイフ使いのように構えたポーズでご提案しました。
背景は世紀末っぽい廃墟で、タイトルロゴは少年漫画みたいなテイストで。
服はこちらからの提案で、服破りになりました。
イラストのお見積りは、背景・タイトルロゴつきのイラスト1点の制作費と、使用料で出させていただきました。
ここで要注意なのが、スライドの比率です。
スライドを作成するアプリによって16:9なのか、4:3なのか、印刷配布するのでA4サイズがいいのか、などを確認をします。
今回はパワーポイントで作成されるということで、4:3比率でお作りしました。
その他資料として、内視鏡の写真画像など専門器具の参考画像を送っていただきました。
ラフ(下絵)の作成




中央または右寄せのタイトルと、夕日と雷の背景の2パターンで提案しました。
顔と、内視鏡の先が良くみえたほうがいいということで、雷背景で右寄せタイトルの構図に決定しました。
顔がちょっと似ていないということで顔の修正をしました。
このラフ修正でOKがでましたで、仕上げ作業へと進めました。
イラストの仕上げ(完成)
線画を描き、色を塗って、文字に飾りを施して仕上げたイラストがこちら。
文字の外枠の色は赤のままがいいとご要望をいただいたので、赤に戻しました。
こちらでFIX(最終決定)になりました。
うん……、間違いなく、インパクトはありますね。(笑)
イラストを納品して学会でプレゼンを終えられた後に、クライアント様から感想のコメントを頂戴しましたので、掲載します。
感想コメント
ネットで探して自分のプレゼンテーションで使用するためのインパクトのあるイラストをお願いしました。
とにかく、レスポンスもはやく、何よりクオリティがとても高く驚きました。
数百人相手のプレゼンテーションで、最初の一枚目にクダリさんのイラストを載せているだけで会場がざわついてました。
正直もっとお金も高いと思ってましたが、このクオリティでこの価格なら完全に元が取れます。
次もまた依頼させて頂く予定です。
本当にありがとうございました。
こちらこそリピートで注文をいただきありがとうございました。
「イラストで狙った効果を引き出せた」と言っていただけて、とても嬉しいです♡
3. イラストの著作権契約について
さて最後に、今回の依頼の著作権契約はどうなっていたのでしょうか?
実は似顔絵イラストは著作権は譲渡しておりません。
イラスト制作費と利用料をお支払いいただいています。
イラストの著作権って、大抵のクライアントが譲渡を希望されるのですが、イラストの用途や種類、個人か法人かによっては、必ずしも譲渡してもらうメリットが薄い場合もあります。
ざっくりですが、著作権を譲渡してもらった方がいいイラストは
- 企業キャラクター
- グッズや商品パッケージに利用するイラスト
- 再現性の高い(あらゆるものに使う可能性の高い)イラスト
これらは例えばイラストレーターが著作権を持っていると、イラストレーターが利用の差し止め請求ができたり、そのキャラクターを使ったイラストを他のイラストレーターに発注できないといったデメリットがあります。
著作権を持っているイラストレーターとのトラブルを極力避けたい企業でしたら、リスクヘッジのために権利ごと買い取るというのは普通にアリな選択でしょう。
通常イラストには制作費以外に二次利用料がかかりますが…
二次利用料についての詳しい解説はこちら↓
著作権譲渡を受けると今後利用料は発生しませんし、イラストレーターに使用の許可を取る必要もありません。
「このイラスト・キャラクターの、オーナーになれる」と言えばわかりやすいかもしれません。
ただし、イラストには著作権のほかに「著作者人格権」という法律で定められた権利があります。
こちらを著作者(クリエイター)から譲渡してもらうことは法的に不可能です。
著作人格権についての詳しい解説は、こちらの外部記事が簡潔で分かりやすいのでご覧ください。
「 著作者にはどんな権利がある?」(CRIC公益社団法人著作権情報センター)
一方、著作権譲渡の最大のデメリットは、著作権譲渡料は高額になることです。
著作権譲渡の料金は個々のイラストレーターによってそれぞれ違いますので、最初から譲渡を希望する場合は、見積りをしてもらうときに打診しましょう。
しかしする著作権譲渡を希望する前に、
「ほんとに著作権譲渡料を払うほどのイラストか?」
「オーナーになって管理しなくてはならないようなイラストか?」
ということを一旦考えてみてほしいです。
パンフレットや名刺、テキストに使うカットくらいでしたら、正直著作権を譲渡してもらわなくても問題ないと思います。
もしご自分で判断がつかなければ、イラストレーターに相談してみてください。
それからもし、そのイラストが評判が良くて、今後もっとそのイラストを使っていきたくなった時も、最初は譲渡契約をしていなくても、イラストレーターに譲渡してほしいと相談することもできます。
一方、イラストレーター側の著作権譲渡のデメリットは大きくこの2点です。
- イラストを望まない形で使われたり、改変される可能性がある
- 今後自分にそのキャラクターのイラストを確実に発注してもらえなくなる
前提の一般常識として知っておいてほしいことですが、イラストレーターは基本的に著作権を著作者である自分自身が保持することを望んでいます。
著作権譲渡に応じない主義のイラストレーターも中にはいます。
上記の「イラストを望まない形で使われたり、改変される可能性がある」ことが大きな理由です。
でもビジネスで「イラストを自由に使いたい」というクライアント側のニーズを、イラストレーター側もわかっています。
お互いの立場や利益や想いを理解して、折り合いをつけることは可能です。
金額で折り合いがつけば話は早いのですが、そのほかの交渉材料によって譲歩を引き出すこともできますので、予算感や用途については、できるだけ最初から提示していただいたほうが、結果的にスムーズなのかな、と私自身は思います。
4. まとめ
今回はわりとイラスト依頼のリアルなところに突っ込んで書きました。
私の場合は、もともとチャットやオンライン会議で完結するクライアント様が7割でしたが、コロナの影響でさらに増えました。
直接会わないでイラストを依頼したりされたりするケースは、コロナが収束しても増えていくだろうし、もっとスムーズにイラストの打ち合わせができるように、実際の打ち合わせについてイメージしてもらえるようにこの記事を書きました。
個人や企業に関わらずクライアントとイラストレーターとの距離が、ポストコロナ、アフターコロナでもっと近くなれば幸いです。
もっと詳しいイラスト依頼の注意点を知りたい方は、こちらのブログをお読みください↓